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From: egi@sannet.ne.jp (Katsumi Egi) Newsgroups: fj.rec.movies Subject: Re: マックィーン マイ フェイバリッツ Date: Wed, 14 Feb 2001 07:36:09 +0900 (JST) 惠木と申します。 In article , mikami.p@f6.dion.ne.jp says... > >短髪の彼、いいですよね。あと、戦争映画で、最後に自爆に近い死に方をした映 >画ありましたよね? タイトルも内容もよく憶えていないんですが、良かった、 >という記憶があるのですが…。タイトル、漢字二文字だったような。  これは間違いなく『突撃隊』(1961 ドン・シーゲル監督)ですね。 難攻不落のドイツのトーチカへ爆弾を抱えながら飛び込むマックィーン。 ドン・シーゲルらしいクライマックス演出の見事な傑作戦争映画です。  ジェームズ・コバーンとボビー・ダーリンが共演していました。 -- 惠木
From: egi@sannet.ne.jp (Katsumi Egi) Newsgroups: fj.rec.movies Subject: Re: AFI100(Re: 積年の疑問(タワーリングインフェルノ)) Date: Wed, 14 Feb 2001 23:15:39 +0900 (JST) 惠木です。 In article <968rgi$79n$1@news.pep.ne.jp>, miyahara.hide@pep.ne.jp says... > >30位「 The Treasure of the Sierra Madre」 >監督J・ヒューストン、出演H・ボガート >「黄金」・・・「マルタの鷹」といっしょにみたのですが、今となっては >どっちもごっちゃになってしまっています。  私はジョン・ヒューストンでは『黄金』が一番好きです。遺作の『ザ・デッド』 も捨てがたいですけれど。  ボガートもティム・ホルトも、そしてとりわけ、ウォルター・ヒューストンが 素晴らしい!ラストの「笑え!笑わなきゃ気が狂うぞ」っていう台詞も凄いよね。 (確かこんな台詞だったはず。うろ覚えですが。) >38位「Double Indemnity」 >監督B・ワイルダー >邦題は「深夜の告白」というらしいのですが、全然知らない映画です。  この映画が未見でちょっと悔しい。大好きなバーバラ・スタンウィックのアン クレット・チェーンが見たい!見たい! これって、レイモンド・チャンドラー の脚本なんですよね。  ちなみに、映画の中のアンクレット・チェーンの系譜で忘れられないものに、 『裸足の伯爵夫人』のエヴァ・ガードナーや『昼下りの情事』のオードリー・ ヘップバーンがありますね。 > 85位「Duck Soup」 >監督レオ・マッケリー出演マルクス兄弟 >「我輩はカモである」 >最初は素直に「あひるのスープ」なんて映画があったのか? >と思っていたのですが・・・・。  "Duck Soup"とはズバリ「カモ」(まるめ込まれやすい人)のことですね。  この映画は戦争を風刺したコメディの中でも最高傑作だと思いますよ。比肩し 得る作品はエルンスト・ルビッチの『生きるべきか死ぬべきか』やキューブリッ クの『博士の異常な愛情』くらいじゃないかと私なんかは思います。 >このベスト100(400)には順当だなと納得できる一方、なんでこの >作品が入っていないの? と疑問が出て来たり。  はい、私の好みにはじぇんじぇん合いまへーん!  まず、ハワード・ホークス作品が上位に無いのが気にくわない。97位でやっと 『赤ちゃん教育』が出てくるなんて。『卒業』が7位なんていうのも私には信じ られない。この映画大嫌い。  しかし『エデンの東』が100位に入らず『理由なき反抗』(59位)が入っている、 なんてところは好感が持てます。 -- 惠木
From: egi@sannet.ne.jp (Katsumi Egi) Newsgroups: fj.rec.movies Subject: Re: ちょっと質問 Date: Wed, 21 Feb 2001 07:45:21 +0900 (JST) 惠木です。 In article <96prec$9ah$1@nw042.infoweb.ne.jp>, eaaa8218@mb.infoweb.ne.jp says... > >「宮本武蔵」は錦ちゃんが百人切っても血がでなかったのに、 >ジェリー藤尾の腕がふっ飛んで「いてぇ〜」と走って行く初っ端から度肝、 >ラスト運命の交差後、血柱がたったあのゆうめいな黒沢の「用心棒」が、 >日本の観客の腰を抜かした、初のスプラッタ映画だったって本当ですか?(長くてご >めん)  そのような風説を私も聞いたことがありますが、黒澤神話の一端かも 知れません。アメリカ映画であれば、『イントレランス』(1916)で既に 血しぶきのカットが見られますね。この映画の残虐シーンは結構凄まじ いものがあります。もっともアメリカ映画もヘイズ・コード後はこのよ うな暴力描写は全く見られなくなり、ヘイズ・コードが解除された後の サム・ペキンパー等を待つことになります。  その他、黒澤明が初めてやった、と聞いたことがある事柄としては、 ・室内の望遠レンズ撮影  絶対に黒澤以前に先例があるような気がするんだけど、黒澤映画では  いたるところで室内シーンの望遠撮影が見られますね。 ・太陽にカメラを向けた  『羅生門』ですね。 ・刀と刀がかち合う効果音    他にもありそうです。 -- 惠木
From: egi@sannet.ne.jp (Katsumi Egi) Newsgroups: fj.rec.movies Subject: ヘイズ・コード(Re: ちょっと質問) Date: Thu, 22 Feb 2001 06:44:43 +0900 (JST) 惠木です。 In article <96vmmu$51h$1@nw042.infoweb.ne.jp>, eaaa8218@mb.infoweb.ne.jp says... > >ヘイズ・コードって何ですか?  アメリカで1934年から本格運用され1968年まで続いた映画製作倫理規定の通称 です。1968年に廃止され現在のレイティング・システムへ移行しました。主に、 性と暴力に関する倫理規定です。当初は脚本段階からコードに逸脱していないか チェックされていたようです。映画史的には、ヘイズ・コードでの性表現の抑圧 があったからこそ、ルビッチやホークスやスタージェスの粋でお洒落な男女のコ メディが完成されていった、とよく指摘されます。あるいは、サム・ペキンパー のヘイズ・コード以前(例えば『『昼下りの決斗』)と以降(例えば『ワイルド・ バンチ』)を比べてみれば、性と暴力の表現が全く違うことに気付かされます。  古いアメリカ映画をよく見る方は、ヘイズ・コードの存在を念頭に置いて見ら れたら面白いのではないでしょうか。もっと詳しい情報を知りたい方は、どこか 検索サイトでお調べ下さい。 -- 惠木
From: egi@sannet.ne.jp (Katsumi Egi) Newsgroups: fj.rec.movies Subject: 黒澤と望遠(Re: ちょっと質問) Date: Thu, 22 Feb 2001 07:10:35 +0900 (JST) 惠木です。  実を言うと、私にとって黒澤明は日本映画の監督では5番目くらいの人です。 黒澤の一般的評価に比べ増村保造や川島雄三が一部の映画ファンからしか支持 されない、という状況を苦々しく思っているのですが... In article <96vmmu$51h$1@nw042.infoweb.ne.jp>, eaaa8218@mb.infoweb.ne.jp says... > >こうしてみると、黒沢氏の先駆者的存在が分かる気がします。 >室内の望遠レンズ撮影の一例を何か映画で教えていただけませんか?  ちょっとうろ覚えで書いてしまいます。間違いがあればご指摘下さい。  まず、『七人の侍』で菊千代が百姓の出だと判るシーンの三船敏郎の絶叫演技 のシーン(これって大嫌い)は望遠だと思います。  しかし私が特に印象深いのは『どん底』の殆どの屋内シーンで標準レンズのカ ットと望遠レンズのカットが息を呑む迫力でカッティングされていたことです。  ラストのお囃子や三井弘次の捨てぜりふなんかは確実に望遠撮影のカットです。  あとは『天国と地獄』の冒頭の会社幹部の会話シーンや、『赤ひげ』での香川 京子の狂乱シーンなんかがすぐに思い浮かびます。また、『悪い奴ほどよく眠る』 の結婚披露宴や『まあだだよ』の宴会シーンなども、室内といっては会場が広い ですが、見事な望遠撮影でした。特に『まあだだよ』の宴会シーンは、演じられ ている光景が目を覆いたくなるほど幼稚かつ滑稽なものなのですが、望遠レンズ だからこその、現実を異化した映像の力がありました。 -- 惠木
From: egi@sannet.ne.jp (Katsumi Egi) Newsgroups: fj.rec.movies Subject: Re: ちょっと質問 Date: Thu, 22 Feb 2001 07:32:47 +0900 (JST) 惠木です。 In article <96us21$jv0$1@bgsv5905.tk.mesh.ad.jp>, egi@sannet.ne.jp says... > > その他、黒澤明が初めてやった、と聞いたことがある事柄としては、 > >・室内の望遠レンズ撮影 > 絶対に黒澤以前に先例があるような気がするんだけど、黒澤映画では > いたるところで室内シーンの望遠撮影が見られますね。 >・太陽にカメラを向けた > 『羅生門』ですね。 >・刀と刀がかち合う効果音 >  > 他にもありそうです。  黒澤が初めて、という訳ではありませんが、アクションシーンで高速度撮影( スローモーション)を使う演出が世界的に広まったのは黒澤明の功績(功罪?)が 大きいという話も聞きますね。  『七人の侍』の前半で勘兵衛(志村喬)が小屋に立てこもった盗人(東野英治郎) を追い出すシーンの演出が目を瞠るスローモーションで、オフで雲雀(?)の鳴き 声が入る音響処理も見事な効果を上げています。このシーンは実はジョン・フォ ード『荒野の決闘』での、ワイアット・アープが酒場で暴れるインディアンを叩 き出すシーンの換骨奪胎なのですが、元の『荒野の決闘』では使われていなかっ たスローモーションを活用することで、見事に突出したシーンとなりました。  このシーンから、アクションをスローモーションで引き延ばして見せる演出が 世界的に流行し始めたのでしょう。 -- 惠木
From: egi@sannet.ne.jp (Katsumi Egi) Newsgroups: fj.rec.movies,fj.rec.tv Subject: Re: 監督と脚本家 Date: Fri, 23 Feb 2001 00:51:25 +0900 (JST) 惠木です。日頃から映画で最も重要なのは「脚本段階」ではなく「撮影段階」だ と思っている者です。(Followup-toをfj.rec.moviesとしています) In article <970eh1$at8$1@nw042.infoweb.ne.jp>, tompei@mb.infoweb.ne.jp says... > > こんにちは。 > 映画では「○○○監督の〜」で紹介されますが、 >脚本家の存在は殆ど紹介されませんし、知りません。 > けれど俳優は「この脚本を読んでイケルと思ったよ」 >なんて言っていたりしますが。 > まあ、脚本や製作兼の監督も多いですが、 >脚本家に対してどうしてこう監督が圧倒的に >知られるんでしょう? > 卑近な例ですが、テレビドラマは「演出」じゃなくて >殆どが逆に脚本家で作品が紹介されるのを思って >ふと聞いてみました。  まず、映画というメディアとテレビドラマというメディアの制作過程の違いに 着目する必要があると思います。以下はあくまで素人(映画ファン)としての私の 認識ですが、  まず、映画は撮影期間が通常1ヶ月以上あり、平均どれくらいかわかりませんが まあ2ヶ月以上はあるのでしょう。その期間で2時間前後の成果物を製作するわけ です。それに対して、テレビドラマは、通常1〜3週間の撮影期間で45分〜2時間 程度の成果物を作成するのでしょう(例外的な撮影期間はあると思いますが)。この 時点で、もう明らかだと思うのですが、テレビドラマは撮影期間の短さゆえ、でき るだけ効率的に、それは演出家の拘りをある程度犠牲にしながら、脚本に忠実に撮 らなければ納期が間に合わないのです。逆に、映画では撮影中に様々な監督の創造 性を発揮する時間的余裕があります。気に入った雲の形を何日も待つ、なんてこと は映画製作にはできてもテレビドラマ制作ではまず不可能です。  というようなことろからテレビドラマは脚本とキャスティングの良し悪しに大き く左右される訳で、例外的な突出した演出家(久世光彦だとか)を除いて、脚本家が クローズアップされるのも無理がありません。  そこで、「映画において脚本はどれほど重要か」という命題です。多くの一般の 映画ファンが「映画で一番重要なのは脚本」と信じられているように私には思える のですが、本当にそうでしょうか。  映画製作に携わるスタッフがそう言うのなら私も納得します。プリ・プロダクシ ョンの成果物がしっかりしたものでないと、撮影工程が心配であるのは当然です。 また、ホークスやヒッチコックやワイルダーが「良い脚本が手に入れば良い映画が できたも同然」というようなコメントを残しているのも充分頷けます。なぜなら、 ワイルダーは少し置いておくとしても、ホークスやヒッチほどの演出技量をもって すれば(少々悪い脚本でも演出で見せきれるのだから、なおさら)良い脚本を土台に 演出できれば拙い映画ができるはずが無いでしょう。言うなれば演出家の力量と自 信の裏付けがあってはじめて納得できる科白です。間違えないで下さい。彼らは決 して「良い脚本があれば、誰が演じても、誰が撮影をしても、誰が監督をしても、 良い映画ができる」と言っているのではありません。  では、完成した映画を見る私のような一般の映画ファンにとって脚本にはどれ程 重きを置く必要があるのでしょう。少なくも私にとっては脚本等どうでも良いです。 科白に「納得性がある」とか「カッコ良い」に越したことがありませんが、それも 演技・演出があってこそです。  例えばダドリー・ニコルズの脚本であれば、ある程度の面白さの期待をもって見 ることができますが、それでもマイケル・カーティスなんかが監督してしまうと、 平板な映画になってしまっているように思います。  エルモア・レナード原作でスコット・フランク脚本の2本の映画『アウト・オブ・ サイト』と『ゲット・ショーティ』を見たときに感じる完成した映画としての歴然 とした映画的興奮度の差はどうしてでしょう。 #ま、人によって面白さの感じ方は様々だし、皆さんの「脚本」信仰を払拭  させようという主旨の投稿ではありませんので。念のため。 -- 惠木
From: egi@sannet.ne.jp (Katsumi Egi) Newsgroups: fj.rec.movies,fj.rec.tv Subject: Re: 監督と脚本家 Date: Fri, 23 Feb 2001 08:16:44 +0900 (JST) 惠木です。fj.rec.tvは外します。 In article <973ijj$cor$1@nw042.infoweb.ne.jp>, plughead@anet.ne.jp says... > >一般の映画ファン? >皆さんの「脚本」信仰? > >「脚本」信仰を持つ「皆さん」は一般の映画ファンではない >ということでしょうか?  私の先の投稿をよく読んでいただければ、決して「脚本信仰者」が「一般の映 画ファン」ではない、なんて言っていないことを理解していただけると思うので すが、私も誤解を生みやすい表現を使ってしまったかもしれません。  以下は私の先の投稿の一部の引用です。 In article <973chs$b90$1@bgsv5905.tk.mesh.ad.jp>, egi@sannet.ne.jp says... > そこで、「映画において脚本はどれほど重要か」という命題です。多くの一般の >映画ファンが「映画で一番重要なのは脚本」と信じられているように私には思える >のですが、本当にそうでしょうか。  まず、この部分だけでも【「脚本」信仰を持つ「皆さん」は一般の映画ファン ではない】なんて言っていないことがご理解いただけると思います。 -- 惠木
From: egi@sannet.ne.jp (Katsumi Egi) Newsgroups: fj.rec.movies Subject: Re: ちょっと質問 Date: Fri, 23 Feb 2001 08:20:19 +0900 (JST) 惠木と申します。 In article <9739dd$83n$1@nw042.infoweb.ne.jp>, DQK04070@nifty.ne.jp says... > >黒澤映画では「生きものの記録」以降、ワンシーンをツーキャメラで撮るように >なって、一方のカメラで主に望遠レンズを使ったのだと思います。室内シーンで >は縦構図のパンフォーカスもよく使っていますね。「生きる」の加東大介たちヤ >クザが廊下をうろついているシーンなど。  黒澤のマルチ撮影(2台以上のカメラでの撮影)によるカッティングの妙味につ いては彼の映画を見た際に意識せずにはいられない特質ですね。『生き物の記録』 は、工場が火事になった後の修羅場(みんな泣き叫ぶシーン)なんかがどうにも 好きになれない映画なのですが、三船の家の室内での人物の動かし方と望遠のカ ットをうまく挿入したカッティングは面白いです。 >ます。アクションの瞬間ではな >く、その後にスローモーションを使っているのが特徴的です。こういう使い方を >している映画監督は他にあまりいないと思いますがいかがですか?  確かにご指摘の通り黒澤のスローモーションカットはアクションの後に使われ ている、リアクションショットの挿入は別として、少なくも運動と停止という事 で言えば、停止のカットで使われていますね。私も今まで殆ど意識しておりませ んでした。また、黒澤ほどこれを顕著にやる監督はちょっと思い浮かばないです ね。『俺たちに明日はない』のラスト、ボニーとクライドが無数の銃弾を受けて くずおれるシーンはこの系譜かも知れません。『スター・ウォーズ』(エピソー ド4)のオビワン・ケノービの最期はどうでしょう。(スローじゃなかったかも) あるいはジョン・ミリアス『デリンジャー』で若きリチャード・ドレイファスが 銃弾に倒れるカットはどうだったでしょう。このシーンではオフで雲雀(?)の鳴 き声が入ったと記憶しています。ちょっとご質問の主旨を外しているかもしれま せんね。 -- 惠木
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