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『深夜の歌声』
(ジーン・ネグレスコ,1948)

 序中盤まではルピノの一人勝ちだが、プロットから隠蔽されていたウィドマー
クが後半になって再登場すると、ウィドマークの独壇場になる。また、遊撃手的
な位置づけのセレステ・ホルムもラストまで見せ場のある良い役だ。この3人に
比べると、プロット上の主人公と云ってもいいコーネル・ワイルドは平凡に感じ
られる。

 原題は「ロードハウス」。そのオーナーのジェフティがウィドマーク。ワイル
ドは店長のような位置づけで、ホルムも従業員だ。こゝに、新たに雇われた歌手
がルピノ。ということで、勿論、ピアノを弾き歌唱するルピノのシーン(全編で
4回ある)が見どころだという意見には首肯するが、良いのはそれだけではなく、
そもそもボーリング場を併設し、バーカウンターと小さなショウ・スペースのあ
るロードハウスの内装・美術装置がとても雰囲気があるし、ルピノが唄う際には
照明が落とされ、ピアノの周りだけライトがあたるといったライティングもとて
もいい。

 また、ウィドマークが、ルピノの泊るホテルの部屋に朝食を運ぶシーンがあり、
そのちょっと後には、ルピノがロードハウスのワイルドの部屋に朝食を運ぶとい
う繰り返しの見せ方や、ワイルドがルピノとの関係をウィドマークに話す場面の
仰角ショットの演出なんかも実にドキドキさせられるものだ。

 あるいは、クライマックス、半ばウィドマークの命令でワイルド、ルピノ、ホ
ルムが連れて行かれた山小屋の場面のテンションの高さも凄い。ウィドマーク一
人が楽しそうにしている。皆を外に出し、トマト缶をライフル銃で撃ち、血のよ
うだろうと云って笑う。次に帽子を木の枝にかけ、ルピノに撃たせる場面のスリ
リングなこと。この後の霧の中の追いかけ合いと、4人のアップ挿入も活用し急
加速したかのように緊張感を増す演出が見事だ。本作の撮影者はジョセフ・ラシ
ェル。本作も霧の造型がいい。

#備忘でその他の配役などを記述します。
・ロードハウスの従業員でレジ係だろうかアーサーはO・Z・ホワイトヘッド。
・ロードハウスで酔客が大暴れする際に来る警官の一人はクランシー・クーパー。
・警察署長のイアン・マクドナルドは『真昼の決闘』の敵、フランク・ミラーだ。