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『限りある命』
(ジーン・ネグレスコ,1946)

 原題は「誰も永遠には生きられない」で、これは劇中のウォルター・ブレナン
−ポップ(オヤジ)の口癖だ。本作はジーン・ネグレスコの犯罪映画。ネグレス
コって、映画史上に屹立するといった大傑作は作っていないかも知れないが、決
して見捨てられない佳編がいくつもある。本作もその最右翼だろう。私の好みと
いうことで云えば、十分に傑作と云っていい出来栄えだ。

 主人公は詐欺師のジョン・ガーフィールド−ニック。ターゲットは最近夫の死
によって200万ドルを相続した女性・グラディス−ジェラルディン・フィッツ
ジェラルド。いわゆる(最近の言葉だと思うが)ロマンス詐欺でもって、架空の
投資話に金を突っ込ませる計画だ。カモとしてのグラディスを見つけて来たのは、
いつもイライラし焦っている男・ドク−ジョージ・クールリス。ドクをニックに
紹介したのがポップ−ブレナンで、彼はニックの古くからの仲間。もう一人ニッ
クの相棒−アルがいて、これをジョージ・トビアスがやっている。

 プロット展開としては、ありきたりなメロドラマということになるかも知れな
いが、ニック−ガーフィールドはグラディス−フィッツジェラルドをメロメロに
したのと同時に、自分もぞっこん惚れてしまう。潔くもすぐに、ドク−クールリ
スらへの当初の分け前は自腹で払い、計画は無かったことにして、姿を消そうと
するのだが、クールリスたちは、ニック−ガーフィールドが200万ドルを独り
占めするつもりだと勘ぐってしまうということで、死活のスリルへと発展する。

 さて、本作の撮影者はアーサー・エディソンで、彼の貢献も大きい、というか
私には絶大に見える。特に、ガーフィールドとクールリスが最初に対決する、テ
ーブル下にクールリスが拳銃を構えてからの、ホークスの『脱出』みたいな極め
て簡潔なアクションシーンや、終盤の港の桟橋周辺における霧の造型だとか、後
のジョン・アルトンらに決定的な影響を与えたと思われるローキーのショットが
散りばめられている。しかし、これらノワールの刻印だけでなく、水着姿のガー
フィールドとフィッツジェラルドが浜辺を一緒に走るショットや、2人がスペイ
ン様式の教会(伝道所)を訪れる場面の厳粛な空気の醸成なんかも、エディソン
の撮影の良さがよく感じられる部分だ。

 また演者だと、大好きなガーフィールドとブレナンが、いつもながらの強烈な
個性で存在感を発揮しているが、本作のフィッツジェラルドの知的かつ愛らしさ
もある造型と、悪役としてのクールリスの偏執的演技もポイントが高いだろう。
いやそれにしても、本作のフィッツジェラルドには、誰よりも優秀なプロの詐欺
師を自認するガーフィールドでも感情を抑えられなかったことが納得できるだけ
の魅力がある。それを引き出したのはネグレスコに他ならない。

#備忘でその他の配役などを記述します。
・ガーフィールドが預けた金を使い込んだ元情婦・トニはフェイ・エマーソン。
・ドク−クールリスの仲間にはウィンディ−ラルフ・ピータースがいる。
・フィッツジェラルドのアドバイザーのマニングはリチャード・ゲインズ。
・ダイナーでトビアスとやりとりする店員のホレスはグレイディ・サットン。