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『Balked at the Altar』
(D・W・グリフィス,1908)

 いまだ『ドリーの冒険』から1か月ちょいという時期のグリフィス作品。タイ
トルを訳すと「祭壇でためらう」ぐらいか。結婚式当日、教会の祭壇の前で逃げ
出した新郎を描いた全き喜劇、スラップスティックだ。

 開巻は戸建てと思しき建物の庭というか小さな玄関ポーチ前に女性が座って本
を読んでいるショット。画面右に玄関ドアがあり、画面左には低いフェンスとい
うか門扉がある。その向こうの道を白人男性が3人ぐらい通り、その度に女性は
色めき立つので、かなりの男好きかと思う。なのに、犬を連れた黒人男性が来た
際には完全に無視しているようだ。そうこうしている内に、右のドアから女性の
父親が出て来る。そしてカットを換えて、父親は雑貨店のような場所から一人の
男性を連れて帰宅し、長い銃身のライフル銃を突きつけて脅す。

 次に結婚式当日、教会前だろう、人々が画面左から右の高台へ階段を上がって
歩いて行くショット。この小さな高低差のある画面がいい。次に繋がれるのが、
教会内部で、最初の段落に書いた、新郎が逃走するショットなのだが、画面奥の
窓(ステンドグラスか)を突き破って外に出るという演出だ。この後、逃げる新
郎と追う人々のショットが数カット繋がれるのだが、いわゆる待ちポジションで
逃げる新郎と追っ手とを時間差でフレームイン/フレームアウトさせる演出は、
今見ても全然違和感のないかたちで実装されている。

 この追いかけ合いの中にも、冒頭に出て来た黒人のペットの犬が存在するのが
いいし、最も良いショットをあげるとすれば、5メートルぐらいの崖の上から、
人々が次々と滑り落ちるショットも目を瞠る造型だろう。最終的に逃げる新郎は
捕まえられて、教会に戻されるという帰結だが、ファーストショットからずっと
人物はフルショットかそれ以上に引いたロングショットで捉えられていたのに、
ラストショットだけ、ちょっと寄った、本を持った女性のウェストショットレベ
ルが挿入される。これが、こゝまでのプロットは、女性による空想(あるいは持
っている本に記載されいている物語の具現化)かと一瞬思わせるぐらい、特別感
のあるショットなのだ。