監督として一人立ちしたヘンリー・ハサウェイが、ランドルフ・スコットを主
演にして立て続けに作った西部劇7本の内の1本(全てゼイン・グレイ原作)。
本作は野牛(バッファロー)の狩猟業を題材にしており、原題を直訳すると「轟
く群れ」だ。もっとも、私が見たバージョンのタイトルは改題されていて、「バ
ッファロー・スタンピード」というさらに直截的な表現になっていた。
冒頭最初のシーンに登場するのはハリー・ケリーで、彼は狩猟隊のリーダー・
スプラーグ。同業者たちの会話が描かれ、いくつかの名前が出て来る。あまり評
判のヨロシクない同業者にジェットがいること。スプラーグの長年のビジネスパ
ートナーとしてピルチャックがおり、毛皮を運ぶ駅馬車の御者はトムであること
なんかが分かる。
続く場面は駅馬車の大俯瞰だ。御者の一人はランドルフ・スコットで、彼がト
ム。のっけから、疾走する馬に飛び移り、手綱を修繕するといった見せ場がある。
やゝあって、道の脇(土手下みたいな低いところ)に横転している馬車が見えて
来る。トムは「ピルチャック!」と叫ぶ。ピルチャックはレイモンド・ハットン
で、先住民の扮装をした白人たちに毛皮を盗まれたと云う。そう、この強盗団の
ボスがジェットであり、ノア・ビアリーが演じている。本作の主要人物というこ
とだと、ジェットの妻−ブランシュ・フリデリシと、その養女・ミリー−ジュデ
ィス・アレンを付け加える必要があるだろう。トムとミリーは恋仲のカップルだ。
本作も特に前半は才気走った演出がある。例えば、トムとミリーの草原での逢
引きの場面。口笛が合図というのもいいけれど、乗馬したトムがミリーを見つけ
ると馬を疾駆させる。トムはミリーの後景にある木の枝につかまって着地するの
だが、馬は走り抜ける、という演出。これカッコいい!あるいはミリーの養母−
フリデリシの女傑の造型も面白いと思う。とにかくこの人の顔は終始怖い。とこ
ろが、中盤以降、トムとミリーの関係及び、ジェット一家(ビアリー、フリデリ
シの夫婦)とトムやスプラーグとの対決が放ったらかしにされ、深化した描写が
ないというのが本作のまずは一番大きな欠点だろう。
代わりのように、タイトルを表すバッファローの暴走、さらに先住民(コマン
チ族)との戦闘が見せ場として設定されているのだが、私は基本、現在のポリコ
レ感覚で気にするような見方はしないけれど、そうは云っても、いずれも白人に
よる殺戮行為であるという側面がどうしても心にちらつくし、いやそれ以上に、
コマ落としの使い過ぎで、アクション場面が安っぽくなっている方が気になった。
尚、トム−ランドルフ・スコットに「自分の父はスプラーグ、母はピルチャッ
ク」と云う科白がある。当時、ケイリー・グラントと同棲していたことも有名な
スコットからこんな科白を聞いてしまうと、意味深にも感じられる(スコットと
グラントの同性愛疑惑は疑惑にとどまっていると思うが)。実際、スプラーグと
ピルチャックがクィアな関係であることを匂わせる演出はないが、2人の友情は、
かなり強調されているし、スプラーグがピルチャックに「お前がブライズメイド
(花嫁の介添え人。普通は女性)をしろ」と云う科白もある。
#備忘でその他の配役などを記述します。
・ハリー・ケリー以外にサイレント期の主演スターが2人出ている。スプラーグ
の同業者(仲間)のスマイリーはモンテ・ブルー、スプラーグの部下の1人の
フランクはフランシス・フォード(ジョン・フォードの実兄)だ。
・トム−スコットの相棒の御者・ビルはバスター・クラブ。
・ジェット−ビアリーの部下のプルーイットはバートン・マクレーン。
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