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『砂漠の遺産』
(ヘンリー・ハサウェイ,1932)

 ヘンリー・ハサウェイの初の単独監督作。かつ、ランドルフ・スコットの初主
演作となる約1時間の小品西部劇だ。しかし、これが矢張り、新人監督らしいと
云ったらいいだろうか、実に瑞々しい才気に溢れた作品に仕上がっている。本作
から、ハサウェイ+ランドルフ・スコット(+原作:ゼイン・グレイ)のコラボ
レーションが6作続くことになるとのことだ。

 冒頭は高い山の上(崖上)にいて、見渡せる土地を自分のモノにしたいとうそ
ぶく悪役のホルダーネス−デヴィッド・ランドーから始まる。隣にいるのはその
子分(というか用心棒)のレフティ−グイン・ウィリアムズ。続いて登場するの
が力持ちの牧場主・ナアブ−J・ファレル・マクドナルドで、この人はサイレン
ト期からフォード映画などでお馴染みの役者であり、本作の精神的支柱のような
存在だ。次に、牧場での彼の場面からディゾルブで繋がれるのが、屋内で新調し
た服を着ているヒロインのジュディ−サリー・ブレーンだ。この登場シーンは、
鏡を上手く使った良い演出と思う。ジュディはナアブの息子・スナップ−ゴード
ン・ウェストコットの婚約者という位置づけ。こゝに、東部から来た測量技師と
いう役柄でランドルフ・スコット−ジャックが現れる。ナアブの土地を手に入れ
たいホルダーネスにとって、測量技師は邪魔な存在になる。

 ハサウェイの才気あふれる画面作りの例を記しておこう。上でヒロイン登場の
ディゾルブ繋ぎについて触れたが、ランドルフ・スコット−ジャックが登場する
シーケンス導入部でも、町の酒場(サルーン)の正面へ、ゆっくり前進移動する
ショットから、ディゾルブしてルーレットをしているナアブの息子・スナップに
繋ぐというカッティングだ。あるいは、砂漠を乗馬で行くスコット−ジャックを
映した後、サボテンの陰から銃だけが出ているショットがあり、銃声が轟いた次
に、倒れた馬を見せ、スコットの歩く脚だけを映すショットを繋ぐ演出だとか、
ホルダーネスとスナップの会話シーンで、画面右上へパン・ティルトすると、山
上に乗馬しているジャックを捉えるショットなんかも手間がかかった分、驚かせ
てくれる演出だと思う。

 あるいは、ヒロインのジュディが、私の夏の家と云って戸外の樹上で寝る場面
があり、翌朝、目を覚ましたジュディが木の下(根元)を見ると、そこにジャッ
クが寝ており、彼の顔に水を滴らせる、というシーンの瑞々しさ、可愛らしさも
忘れ難い。こゝで環境音として入る鳥の声もとても効果的だと思う。そして、終
盤になってランドルフ・スコット以上に重鎮J・ファレル・マクドナルドが活躍
するというのがいいし、単純なハッピーエンディングではない、ビターな要素も
残した帰結という点もカッコいい。

#備忘でその他の配役などを記述します。
・牧場の給仕や針仕事をこなすウィンディはヴィンス・バーネット。
・スナップとつるんでいる牧童・フレッドはジャック・ペニックだ。
・サリー・ブレーンはロレッタ・ヤングの実姉。うつむいた顔などよく似ている。