冒頭は昭和20年早春(とテロップが出る)。エンディングは同年8月初旬だ
(8月5日ぐらいだろうか)。本作は特攻隊を題材にする航空映画(戦争映画)
であり、海軍予備学生(少尉)の鶴田浩二とその恋人−八千草薫のメロドラマで
あり、明確な反戦映画だ。終盤、八千草の父−笠智衆は鶴田を前にして「今とな
っては負けてもいい。早く終わってもらいたい」と云い、エンディングで鶴田は
「戦争のないところへ行こう」と云う。
さて、航空映画/戦争映画としての側面では、ニュースリールの断片のような
記録映像も活用されているが、ミニチュア模型を使った戦闘機(計器盤には九七
式戦闘機と記載されている)の飛行、空中戦や、敵艦空母の爆撃シーンなどがあ
り、これらは円谷英二が特技監督を担当していて、今見てもかなり迫力のある造
型だ。ラスト近くの空襲で列車が吹っ飛ぶ描写や、避難した人々が逃げ込んだト
ンネルのショットにおける爆風の表現も凄まじい。
一方、メロドラマとしては、これはもうワタクシ的には最も美しい時期の八千
草薫をうっとりと見つめ続ける映画に他ならない。さらに云えば、鈴木英夫の演
出にも陶然となる場面が多数あった。例えば、八千草が鶴田のいる海軍航空隊の
基地に面会に行き、浜辺を2人で歩くシーンで挿入されるフラッシュバックだ。
上野の東京都美術館の前で待ち合わせをする2人から始まり、森の中を歩く2人
の横移動のロングショットがまるでハリウッド映画のようなゴージャスな照明だ
し、鶴田がプロポーズした後の木立の中の2人のショットも何てフォトジェニッ
クなことか。
あるいは、寝室の2人がパジャマ姿でダンスをする場面の時間の使い方。窓を
背景にしたショットは全編で沢山あるが、夜の光の中での2人のダンスを、少々
冗長に思ってしまうぐらいに実に肌理細かく繋ぐこのシーンの演出(時間の使い
方)は特記すべきものだろう。他にも、全編で1回だけある2人のキスシーンも、
寝室の窓を前にして演じられる。尚、このキスシーンもそうだが、後半の多くの
場面で八千草が着ている胸元にフリルのあるブラウスが実にいい。胸のカタチを
綺麗に見せていると思う。
#備忘でその他の配役などを記述します。
・八千草の父は笠智衆だが、母は夏川静江。妹(次女)は峯京子。
・鶴田と同じ航空隊にいる飛行士仲間に小林桂樹と佐原健二。
・鶴田らの上官は加東大介。さらに上(分隊長級)で清水一郎と田島義文。
・鶴田に紅茶を入れる年配の従兵は多々良純。
・基地には他に、山本廉(飛行士)、佐田豊(歩哨)、北村和夫(軍医)がいる。
・基地のロケーション設定は土浦(茨城県)だろう。しかし、「吉浦海軍航空隊」
と書かれた看板があるので、呉(広島県)かと思わせる。これは紛らわしい。
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