三章、二章、一章と三章構成で時間を遡る趣向だ。それぞれに時間軸(年代)
が異なるワケだが、いくつか重複というか繰り返し(反復)して登場する事物が
ある。例えば、最初の章(三章)における主人公と云ってもいい学校の先生−キ
ウェテル・イジョフォーと元妻のカレン・ギランは、三つ目の章(一章)のダン
スパーティの場面にも登場する。あるいは、三章でイジョフォーが夜の道で出会
うローラースケートをする少女は、二章の最後に、チャック−トム・ヒドルスト
ンが町を歩く場面でもさりげなく映るだろう。
こういった反復の中で、私が一番唸った使い方の例が、最初の章(三章)のイ
ジョフォーの住居の階段で、最上階のドアにポン寄りをするカッティングだ。こ
れを見た時点では後の章で同じドアが出てくるとは当然予想していなかったが、
ポン寄り自体が特別感のあるキャッチーな演出だし、三つ目の章(一章)でこの
ドア(屋根裏部屋のドア)が再登場した際に、先の(三章の)ポン寄りの挿入は
凄いと感じ入った。
もう一つの例が、全編のハイライトと云っても過言ではない、二章のチャック
によるダンスシーン、その踊りだす直前のカッティングだ。ストリートミュージ
シャン(黒人女性のドラマー)−ザ・ポケット・クィーンの演奏に反応し、足を
止めたチャックのシーンで、煮込み料理をする女性の俯瞰ショットを挿入する部
分を云っている。これが、三つ目の章(一章)でダンスを教えてくれるチャック
の祖母−ミア・サラだと分かった瞬間は鳥肌が立つような震慄を覚えた。勿論、
こゝから続くチャック−ヒドルストンと、赤いワンピースの女性−アナリース・
バッソとのダンスシーンが素晴らしいという意見にも賛同するが、2人のダンス
自体もさることながら、ドラマーの女性のリアクション(驚きの表情など)も含
めた肌理細かなカッティングが良いのだと私は思う。
あと、一章のチャックの祖父母の配役とその扱いはたまらないものだというこ
とも明記しておきたい。多くの人は祖父のマーク・ハミルについて感慨深いと感
じられると思うが(それは私も勿論そうだが)、いやそれ以上に、私にとって、
上述の祖母役・ミア・サラに再会できたことが何よりも嬉しい。実を云いうと、
本作を劇場公開中にどうしても見ておきたいと思った一番の動機が、ミア・サラ
を見たいと思ったことなのだ。彼女のデビュー作『レジェンド/光と闇の伝説』
初公開の際、彼女を見たいがために2度映画館へ足を運んだのです。いやあ、予
想に違わず、とても品のある可愛らしいお祖母さんになっていて感激しました。
#リタ・ヘイワースとジーン・ケリーの『カバーガール』が配信などで度々映る。
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