深作欣二によるリメイク版。ジャコ萬は丹波哲郎で、鉄は高倉健だ。もちろん
(?)冒頭クレジットの順番は高倉が1番で次に丹波が出る。本作は高倉が岡田
茂に頼み込んで実現させた企画らしい。全般的な感想を先に書いておくと、私は
旧作・東宝版(谷口千吉+三船敏郎+月形龍之介版)よりも今作の方を買う。も
っとも、旧作を見たのは随分前に一回きりなので、もう一度見返せば、異なる感
想になるかも知れない。
うろ覚えの旧作と比較したところで愚行に過ぎないと思いながらも、もう少し
書かせてもらうと、旧作でいかにも黒澤っぽい(よく云えば清廉、悪く云えば青
臭い)と感じた造型−例えば、ジャコ萬の仕返しの理屈、皆から「大学」と呼ば
れるヤン衆(ニシン漁の出稼ぎ労働者)の描き方(本作では「大阪」−江原真二
郎に引き継がれている)、そして、鉄が憧憬する教会のオルガン奏者−久我美子
(こちらは本作では牧場の娘−入江若葉)、これらのウィークポイントが、本作
では、かなり上手く違和感の少ないカタチに修正されていると思った。逆に、ク
ライマックスのニシン漁のシーンなど屋外をドキュメンタリータッチで撮った画
面においては、旧作の方が力があったとも思う。
では、本作の良かった部分を具体的にいくつかあげておこう。まず冒頭のプロ
ット導入部で、短いディゾルブ繋ぎを多用する趣向。ファーストショットは雪の
中を走る蒸気機関車の俯瞰だが、こゝから3カットぐらい走る汽車の良いショッ
トを見せる。出稼ぎの男たちが降り立ち、彼らが海辺を一列で歩くショット、岩
場の風景からズームアウトして、網元の山形勲が海を見る後ろ姿をフレームイン、
さらに浜辺で網の準備作業をする男たち、といったカッティングをディゾルブで
繋いでいくのだ。
次にジャコ萬−丹波の登場シーン。死んだと思われていたジャコ萬が寝台にい
る。これを切り返して、画面右手前に丹波、中央奥に山形、さらに左奥に山形の
娘−南田洋子とその婿−大坂志郎を捉えた、シネスコの構図を活かしたディープ
フォーカスショットがしびれる。こゝに山形の妻(鉄の母)−浦辺粂子が「鉄が
生きているぞ!」と叫びながら飛び込んでくるというのも良い演出だろう。
また、ヤン衆が一堂に会した宴会場面は新旧作ともに名場面であり、こゝで見
せる鉄の奇天烈な唄と踊りのインパクトは全編一だろう。この部分については、
私は高倉よりも三船のぶっ飛び具合の方が上だったと記憶する(本作、高倉の場
合はこれを予期していたということもあると思うが)。あと、高倉が夜更けに馬
橇で走る際に、何度も高千穂ひづるとすれ違う、という反復の見せ方もいい。そ
して、最後に書くのもどうかと思うが、高倉、丹波ともに全く異なる性格付けだ
が、いずれも一本芯の通った素直な格好良さがある、特に高倉の正義感の表現は
青臭く感じさせず爽快だ。
#備忘でその他の配役などを記述します。
・網元−山形の部下の漁師(冒頭、海を見る山形に話しかける人)で沢彰謙。
・ヤン衆の中には、岡部正純、三重街恒二、相馬剛三などの顔が見える。
・ワンシーンのみの出番だが、牧場で働く青年は小川守。
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