仏語版ウィキペディアによると、セルバンテスの「ドン・キホーテ」を映画化
した現存する最古の作品とのこと。ただし、当初は15のシーンで構成された約
15分の映画だったが、現在残っているのは短縮版で、8シーン/約8分のバー
ジョンだ。ウィキの解説には「1904年(初公開版の翌年)、パテ社は最高の
シーンだけを収録した短縮版を公開した」などと記載されているが、実は甚だ疑
問だ。というのも「風車との戦い」が欠落しており、瘦せ馬ロシナンテも出てこ
ないからだ。
現存版の8つのシーンは、ほゞ(最初のワンカットを除いて)舞台に設えられ
た美術装置の前で演じられる光景を、固定のロングショットかつワンカットで撮
影されたもので、引きの絵の中でドン・キホーテと従者サンチョ・パンサ及び他
の人物たちが、ちょこまかと動いていて、私には何をやっているのかよく分から
ないシーンが多かった。もっとも、美術は豪華だし、1階だけでなく2階の廊下
にも人を配置したり、画面奥と手前を意識的に使った造型もあって演出の工夫は
感じられる。
さらに、冒頭のドン・キホーテの書斎のシーンと、中盤のエブロ川の小舟の場
面で、画面分割というか、画面内に矩形の別ショットを合成で入れ込んだような
特技がある。書斎のシーンでは、画面奥右上にある壁に掛かった絵画の中の人物
が動き出す。これは面白いアイデアと思う。川の場面の方は、まず画面右の建物
(水車小屋)の内部が透視されたように矩形で映し出され、次に同じ矩形の中に、
城の前で連行される女性の光景が投影されて、これはフラッシュバックか?千里
眼の表現か?と少々混乱させられた。あと、本作も全てのシーン(ショット)に
おいて、ステンシルによる着色が施されていて、色数は豊かだし、概ね淡い色調
で品が良く、一部、どぎつい原色に近い赤なども用いられるが、それはそれで美
しいと思った。
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