フェリーニが映画監督として一人立ちした作品。監督としての前作『寄席の脚
光』はアルベルト・ラトゥアーダとの共作であり、フェリーニよりもラットゥア
ーダの演出部分の方が多い作品だったようだ。本作もまだまだフェリーニらしさ
が出ていない、という意見もあるようだが、私には、随所で垣間見える図太いユ
ーモア、大らかな人物造型、夜の街を彷徨するシーンが取って付けたように挿入
される作劇、そして、ニーノ・ロータのいかにも彼らしい旋律も含めて、フェリ
ーニらしさをよく感じることが出来ると思った。
まずは、喜劇としてかなり面白い。新婚旅行でローマを訪れたカップル(イヴ
ァンとヴァンダ)の約2日(丸1日ちょっと)のお話で、ホテルに着くなり、新
婦のヴァンダ−ブルネラ・ボーヴォは失踪する。以降、新婦を捜す、というか、
同時にローマの親戚に新婦が失踪したことを隠すイヴァン−レオポルド・トリエ
ステと、疾走したヴァンダの行状が、クロスカッティングのように交互に繋がれ
るプロット構成だ。
タイトルの「白い酋長」は新婦ヴァンダが憧れている有名スターの名前(役名)
で、彼女の失踪の理由はこのスター−アルベルト・ソルディにひと目会いたかっ
た、というだけだったのだが、すぐにホテルに戻るつもりが、白い酋長に口説か
れて、結局2人で時を過ごしてしまう。しかし例によってスターはヴァンダの身
体が目当てなだけという酷い男。白い酋長のゲスぶりにもニヤリとさせられるが、
撮影現場に現れた彼の妻とヴァンダの対決は見どころだ。あるいは、撮影現場の
人々を繋げた闊達な演出で既に微笑させられる。また、イヴァンやその親戚たち
のやりとりもユーモアたっぷりの描き方で、全体に(ヴァンダのパートも含めて)
仰角俯瞰の使い方、前進後退移動などカメラワークも成熟した演出だと感じる。
あと、イヴァンが夜のローマを彷徨って噴水広場で泣いているシーンで、唐突
にジュリエッタ・マシーナが登場する場面は、本作を語る上で触れておかなけれ
ばならないだろう。彼女の役名はカビリアだ。こゝは実を云うと、もっと突出し
た造型かと予想していたのだが、ほとんどプロットのドライブには機能しない、
緩いコントのようなシーンで逆に驚いた。イヴァンをそっちのけで、火吹き男に
絡み始めるマシーナ。しかし、この図太さがフェリーニと思う。
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