戻る

『Le Déshabillage impossible/不可能な脱衣』
(ジョルジュ・メリエス,1900)

 屋内のセット。画面奥には壁。壁の左側下にベッド、右側にはドアがあり、髭
の男性−メリエス本人が帰宅したところ、という感じのフルショット以上に引い
たロングショットから始まる。男性は後ろの壁のウォールハンガーにコートや帽
子を掛けるが、ズボンを脱いだ時点で、なぜか、新たな上着を着、帽子を被った
状態になる。このように、上着やズボンなど衣服を脱ごうとするが、どんどん新
たな上着、ズボン、帽子などが身についていて、いつまでたっても下着だけにな
れず、ヤケクソのように衣服を脱いだり、投げつけたりすることを繰り返す。最
終的に、画面左下のベッドまで消えてしまい、さらに、いつまでたっても服を脱
ぐことができない(新たな服を着てしまっている)途中で唐突に暗転する。

 実を云うと、本作をリメイクしたアリス・ギイの『男はいかにして風呂に入っ
たか』を先に見ていて、そういう意味で驚きは限定的だったのだが、いやこちら
も負けず劣らずの完成度だ。脱いでも脱いでも、すぐに別の衣服を着た状態にな
る特撮は、ストップトリックと、異なる衣服で同じアクションをしたショットの
編集で実現させているのだと思う。アリス・ギイ版は、タイトル通り、風呂に入
るために服を脱ぐというシチュエーション。本作は下着になってベッドに寝るた
めに服を脱ごうとしているのだが、終盤までそれが分からない、という違いがあ
る。しかし、反復の回数の多さ、つまり執拗さと、ベッドまで消えてしまうとい
う明確なオチのある本作の方が、明らかに落着きのいいストーリだと云えるだろ
う。あるいは、メリエスの方が、サービス精神が豊かであり、一方、アリス・ギ
イは簡潔な美しさを志向していると云うべきか。