『勝手にしやがれ』の約5年前、ゴダール24歳の時の監督作。16ミリで撮
られた約10分の短編だが、随分とちゃんとした作品に仕上がっている。それは、
ちゃんとゴダールになっているという意味でもある。例えば、後のジャック・ロ
ジエやベルトルッチは、本作を見た上で影響を受けたのではないかと思えるよう
な、舗道のショーウィンドウを背景にした、良いロケ・シーンがあったりする。
ちなみに、舞台はジュネーブだ。
あるいは、オープニングとエンディングは主人公の女性が部屋で手紙を書く場
面であり、挟まれたメインプロットは主人公がジュネーブの街を彷徨するシーケ
ンス、という構成も落ち着きがいい。また、全体にまだジャンプカットとまでは
いかないが、とても瑞々しく自由なショット繋ぎが実現していて、これも楽しい。
それに、主人公が建物の2階を見ると、窓に女性がいて、階下のサングラスをし
た男性と何やら合図を交わした後、男性が建物に入って行くという場面があって、
この男女の視線のやりとりをカッチリした切り返しで繋いでる。ちなみに、この
場面のサングラスをかけた男性はゴダール本人だ。
そして、主人公が、先の男女のやりとりを真似て、公園のベンチに座っている
見ず知らずの男性に合図を送るべく、ウロウロする場面の可愛らしさといったら。
彼女が恥ずかしそうに振り返るショットと、ベンチの男性が気になって目を向け
るショットを繋いだ切り返しにもハッとさせられる。ゴダールの才能をよく認識
することのできる、まさに宝石のような小品と思う。
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