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『David Harum』
(アラン・ドワン,1915)

 アラン・ドワンのスモールタウンもの。タイトル・ロールのデイヴィッド・ハ
ルム−ウィリアム・H・クレーンは、ホームヴィルという田舎町の銀行家。厳し
い経営者の側面もあるが、好々爺といった感じのルックスだ。彼が町で起こった
偽札事件を解決するのがメインプロットだが、事件の容疑者にされてしまった青
年・ジョン−ハロルド・ロックウッドとその彼女・メアリー−メイ・アリソンと
いう若いカップルを助けるストーリーでもある。

 全体に緩いコメディもしくはメロドラマという出来ではあるが、開巻2シーン
は特筆すべきだろう。ファーストショットはアイリスインして黒い丸枠を途中で
止め、料理の盛った皿とカップ、食事をする手のアップが映る。手は、カップの
液体(紅茶?)を受け皿に入れ、皿を持ち上げる(飲もうとする)。この動作に
合わせて、アイリスも開いていき、同時にティルトアップもし、主人公−ハルム
の顔が見える。こゝでカットを割るかと思いきや、そのまゝ右にパン。パンの途
中で字幕「ハルムの妹−ポーリー」と入ってカットが割られるが、字幕の後はパ
ンの続きで、女性のバストショットがとらえられる。次に、ハルムが銀行に出勤
するシーンとなるが、最初に、通り(町のメインストリート)にある銀行のロケ
ーションを見せる。これが、少し高い俯瞰で、画面奥のどん付きに位置する銀行
までを前進移動でワンカットで寄っていくショットなのだ(馬車の上にでもカメ
ラを置いて撮ったようなショット)。

 本作は名撮影者ハロルド・ロッソン(代表作としては『紐育の波止場』『沙漠
の花薗』『オズの魔法使』『雨に唄えば』『エル・ドラド』など枚挙にいとまが
ない)の最初期の作品で、さらにドワンの演出だし、この冒頭の画面造型に吃驚
したこともあって、かなり期待したのだが、実は以降はあまり良いシーンやショ
ットは出てこない。それでも前半の方が良く、例えば、ホルムが売った悍馬(扱
いにくい馬)の曳く馬車が立ち往生している様子を、手前に置いたホルムが乗る
馬車越しにロングショットの逆構図で見せる部分だとか、ホルムとメアリーが初
めて出会うNYのパーティ場面で、2人が暖炉の側に腰かけるのを、アクション
繋ぎみたいなポン寄りでカッティングした演出なんかは指摘できる。

 後半は、ちょっと平凡な画面ばかりが続くと思いながら見たが、ホルムが家を
出て通りを歩くのを、冒頭の俯瞰前進移動とちょうど逆回しのように、俯瞰で後
退移動しながらワンカットで見せるショットがあり、これは、意識して、冒頭と
対(つい)のように演出したものだと思う。