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『The Land Beyond the Sunset/夕陽の向こうの国』
(ハロルド・M・ショー,1912)

 NYの貧民街(ハーレム)に住む、祖母と2人暮らしで(祖母に虐待を受けて
いる)新聞売りの少年が、慈善団体の企画した子供向けイベント−郊外へのピク
ニック−に参加した様子を描いた作品。本作も全編フルショット以上に引いた構
図ばかりで構成されており、一部小さなパンは認められるが(浜辺を歩く少年の
カットのみと思う)、固定ショットばかりの映画だ。ただし、いくつかとても目
に留まるショットがあり、書き残しておきたい。

 開巻は、破れたシャツを着た少年ジョーが新聞売りをするイメージショット。
黒の背景にフルショットのジョー一人が浮き出るように映った画面。これがディ
ゾルブして街頭で新聞を売るジョーに繋がれる。また、ラストショットの抒情性
と意味深な奥深さも明記すべきだろう。海に漕ぎ出した小舟の超ロングショット
で閉じるのだ。あるいは、ピクニックの中で、引率者の女性が子供たちに絵本を
読み聞かせる場面があり、その物語が一部映像化される部分も目を引く。悪い魔
法使いのお婆さんに、杖で小突かれている少年(王子様のような恰好をしている
ジョー)が歩いて来、そこに唐突にストップトリックで7人ぐらいの妖精のよう
な良い魔女たちが出現し、お婆さんを追い払ってくれるのだ。他にも、ピクニッ
クももう終わり、そろそろ帰りましょうか、というタイミングだと思うが、ジョ
ーのフラッシュバックということだろう、祖母に虐められるジョーの場面が二重
露光で後景の家の壁に映される。

 あと、サイレント期の映画では当たり前のようにカメラに視線を送る人物が登
場するけれど、本作のようなシリアスで情緒的な題材でもこれが頻出することに
も驚きがあった。ピクニックに参加した子供たちがチラチラとカメラの方を見る
のは仕方がないとしても、主人公のジョーもカメラの方をよく見るし、7人ぐら
いの妖精たちは、カット尻で全員がカメラ目線になる。これって今見ると、観客
に対しての共感性の過度な押し付けのように感じられるのだが(チャップリン映
画なんかを見ていても同様に感じられることだが)、当時の大方の観客はこれに
よって、映画の世界に入り込んだような感覚を持ったのだろう。