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『The Heart of an Indian』
(トーマス・H・インス,1912)

 約32分の短編西部劇。前年(1911年)製作の1巻モノと比べて、インス
の画面作りは劇的に進化している。空間のとらまえ方、提示の仕方が全く異なる。
まず最初に驚かされたのが、平原でバッファローに近づくライフル銃を持った開
拓者を後ろから撮ったロングショットに続けて、やはりロングショットだが、完
全にカメラ位置を180度転換したバッファロー越しの画面を繋いだ瞬間だ。こ
の画面で遠くにいる開拓者はバッファローに向けて発砲する。次に、大俯瞰で逃
げるバッファローと追う開拓者の乗馬を見せ、その同一カットにやゝあって唐突
に先住民の騎馬数騎が入ってくる。つまり、野牛狩りのシーンかと思っていると、
一瞬で先住民による白人狩りのそれに転換されるのだ。続いて倒れているバッフ
ァローに少し寄ったショット。そこに開拓者がフレームイン。そのカット内の画
面奥にインディアンが見え、銃撃戦が始まる。さらに、ポン引きのようにロング
ショットに引いて、開拓者の周りを走る先住民の騎馬たち。

 というように、少なくも空間を広く引いて見せるという演出の自由度は格段に
進歩していると感じられる。あるいは、ロングショットのワンカット内で複数の
運動をほゞ同時に現出させる演出の進化、という云い方もできるだろう。このよ
うな例で顕著なのは、上の段落の事件から徐々に先住民と白人開拓民の戦争に発
展するプロットの中で、山の中腹のような斜面に二軒の小屋(開拓民の住居)が
画面中央上下に並んでいる超ロングショットの長回しだ。画面奥右(右上部)か
ら走ってくる男(先住民の叛乱を知らせに来た人だろう)が小さく映り、開拓民
たちも出てきて慌て出す。すると、すぐに画面右上から先住民たちの騎馬が現れ、
銃撃戦になる。先住民たちは、画面上左から画面下まで回り込んで来て、二軒の
小屋の周りを旋回しながら攻撃する、といった一連の動きをワンカットで撮った
アンゲロプロスみたいな超絶シーケンスショットなのだ。

 さて、こゝまで(上の2つの段落では)もっぱら白人開拓者側の視点で書いて
しまっているが、実は、本作のトップシーン及びラストシーンで描かれているの
は先住民側のプロットであり、その酋長役が主演スターのフランシス・フォード
(ジョン・フォードの実兄)だ。このことが端的に示す、あるいは、終盤での虐
殺シーン(やその帰結)の描き方が示す、本作のポリティカルなテーマ的側面も
興味深いと思うけれど、私は割愛する。代わりに、こゝでも先住民による幼児誘
拐と、子供をやっきになって取り戻そうとする「捜索者」が描かれているという
点は書いておきたい。あと、ラストシーンの、風葬場所で祈る先住民の女性の仰
角ショットは確かに鮮烈なものだが、こゝだけあまりにフォトジェニックであり、
少々浮いた感覚も持つ。