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『The Furs』
(マック・セネット,1912)

 マック・セネットの、バイオグラフ社での末期の作品。同年にはキーストン社
を設立する。しかし、もうこの時期からメイベル・ノーマンドが全き主人公だ。
主な登場人物はノーマンドとその夫−デル・ヘンダーソンと、同居している夫の
母−ケイト・ブルースの3人だけ。冒頭はノーマンドが買ったドレスが家に届き、
義母から小言を云われて喧嘩になる場面。こういった嫁姑の不仲を示した後、ノ
ーマンドが、夫から金をくすねて毛皮(襟巻やコート?)を買い、質屋を経由し
て上手く夫からのプレゼントにしてまおうという計画が描かれる。つまり、この
ノーマンドはちょっとした悪妻で、彼女の悪だくみが成功するかどうか、という
映画だ。

 さて、本作でも同一空間内でカットを割る、という演出はまだ行われていない。
全く別の時空間の場面を繋ぐか、同一時間軸上でも、人物が別の空間(寝室から
ダイニングへとか、戸外から質店内へとか)に移動した際に、例えばドアを通っ
たタイミングでカットを換えている。なので、引いたツーショットから寄ったツ
ーショットを繋ぐとか、一人を抜いたりするといった編集はなく、当然ながら、
対面する人物を切り返すといったことは行われない。ただし、人物はほゞ全て膝
上ぐらいの構図で撮られていて、足元が映ることは無い。つまり、フルショット
以上に引いたショットは皆無だったと思う。例えば質屋の前の歩道を歩くノーマ
ンドのショットも足元を映さないというのは、意識して統一しているとしか思え
ない。

#備忘でその他の配役などを記述します。
・セネットは、毛皮店の店員としてチョイ役で登場。
・冒頭の配達員はトーキー以降の西部劇などでも見るレイモンド・ハットン。
・オフィスで奥にいる事務員は後に『雀』を監督するウィリアム・ボーダイン