市川準の長編映画デビュー作。富田靖子は、既に『さびしんぼう』の主演を経
ているが、本作で映画女優としての位置付けを確立させたと云っていいと思う。
18歳の富田はまだまだ初々しく、市川の演出も瑞々しい。クライマックスの文
化祭「飛翔祭」シーケンスにおける「八百屋お七」の人形ぶりシーンが、画面造
型という意味での一番の見せ場だとは思うけれど(その非現実的なまでの美術装
置の出来具合)、私は、何度も繰り返される人力車の後ろを走る富田のショット
こそが、本作を象徴する若々しい映像の力を感じさせる部分だと思う。
しかし、過不足を感じる部分もある。例えば、富田が東京に出て転校生として
最初に教室に入るシーンの彼女のミタメの画面。こゝのフォーカスの演出は随分
と勿体ぶっていると感じる。あるいは、母親−丘みつ子との関係の描き方も勿体
ぶっているというか、意味深にし過ぎだろう。逆に云えば過去の経緯や和解につ
いての描写が不足しているのだ。また、クラスメートの中で重要な人物は数人い
るが、なぜか途中退場する人物として印象に残る白島靖代について。彼女を退場
シーン以前にもっと目立たさないといけないだろう。今ではお婆さん役ばかりの
広岡由里子が学級委員の藤代美奈子らにイジメられる場面(箱を開けると鏡が出
てくる場面)でも、白島は映っているのだが、彼女とは分からないぐらいの映り
方なのだ。
あと、他の演者では富田の叔母で置屋の女将を演じる大楠道代が圧倒的に良く、
その娘−芸者あげは−伊藤かずえも、伊藤に絡むイッセー尾形も中途半端だ。
また、富田の相手役に近い男子生徒役でボクシング部の嶋政宏がいるが、彼の
扱いも弱いと思う。ただし、富田と広岡と高嶋の3人がビアガーデンでビールを
飲む場面は印象に残る。高校生がかなり酔っ払っているという意味でも唖然とす
る場面だが、死にたいと云う富田に、身の上話をした後「教室にいる人間は死ん
じゃいけない」と忠告してくれる女性が登場する(この女優?の名前が分からな
い)。他にも素人っぽい配役でいうと、箱屋(という言葉は出てこないが、芸者
の付き人みたいない仕事)の辰巳を演じる(富田に「八百屋お七」のことを教え
てくれる)はやし・こばの存在もいい。
#備忘でその他の配役などを記述。
・お姉さん芸者のぽん太は室井滋。酒席の客で、大塚周夫、中村伸郎、すまけい。
・ボクシング部のコーチに輪島功一。
・文化祭ゲストの本人役でピンクジャガー(浜田範子と鈴木幸恵)。
・エンドロールの中に萩原聖人の名前があるが、私は判別できなかった。
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