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『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』
(井上淳一,2023)

 事務所の壁には門脇麦の写真がある。終盤では、若松孝二−井浦新が、「めぐ
み!」と呼び、めぐみの声が聞こえる場面もある。あるいは「オバケはチェッカ
ーズってバンドのプロデューサー、高間はいっぱしのキャメラマン」というよう
な科白もあり(足立正生と電話で会話する場面)、ほとんど説明的演出は無いけ
れど、前作(『止められるか、俺たちを』)と繋がっている部分は、さりげない
見せ方で、余計に感慨深く感じられる。

 1982年の12月。ビクターのビデオカメラを回す木全−東出昌大のショッ
ト。高校の野球部の練習を撮っている。彼はビデオカメラセットのセールスマン。
この冒頭で、東出と、もう一人の主人公、井上−杉田雷麟を遭遇させている。ま
た、序盤しか登場しないが、東出の妻を演じるコムアイがとてもいい雰囲気で、
この人には中盤以降も出て欲しかったと思う。

 突然、若松から電話があったということで、木全−東出が若松−井浦に合う場
面。東出は文芸坐の元社員だと分かる。こゝから、本作は映画館−シネマスコー
レの開店とその経営のお話になっていく。私は、てっきり前作と同様、映画作り
のプロットがメインだと思っていたので、少々がっかりしてしまったが、しかし
唐突に、ゾンビメイクの田中俊介と、監督らしき芋生悠の2人が繋がれ驚かされ
る。徐々に、ゾンビ映画の自主製作が頓挫した映研の学生−芋生と、さらに、映
画監督(もっと云えば若松への弟子入り)を目指す予備校生の井上−杉田のプロ
ットが、シネマスコーレをハブとして交わる構成になるのだ。

 というワケで、中盤以降は自伝的プロットが多くなり、撮影現場のシーンも増
えるのだが、しかし、あくまでも、井浦、東出、芋生、杉田、この4人がいずれ
劣らずの比重で描かれた、4人が主役の映画と云うべきだろう。ただし、ヒロイ
ンとしての芋生については、もっと強い造型の方が良かったと感じる。殺したい
奴はいっぱいいる、と云う科白の裏付けをもっと演出すべきではなかったか。セ
ックスの仄めかしを繰り返すのも中途半端じゃないか。どうしても前作の門脇麦
の造型と比べてしまって、分の悪さを感じてしまうのだ(勿論、演出の責任だ)。
また、井上−杉田の撮影現場のシーンが、ほゞ河合塾の記念映画だけ、というの
も弱いと思う。

 尚、映画館の映画である、という側面のおかげで、若松映画だけでなく、日本
映画や映画人への言及が沢山出て来る部分は、実に楽しい。大島渚は当然として、
滝田洋二郎が特別扱いに思えたが、しかし、最も鮮烈な引用は、モノクロの横山
リエのショット挿入(『天使の恍惚』)でした。あと、大林宣彦に対する言及に
は笑ってしまった。