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『BAD LANDS バッド・ランズ』
(原田眞人,2023)

 タイトルは『地獄の逃避行』の影響か。映画内では撞球場の店名。ミネソタ好
きの女主人の鴨鈴女は『ハスラー』が好きで、撞球場をやり始めた、ということ
ではないかと思う。ミネソタファッツという言葉が3回出てくる。

 開巻は安藤サクラのショットから。生瀬勝久は撞球場で球を撞く。この冒頭は
目まぐるしいカット割り。また、特殊詐欺にまつわる会話や安藤の左耳が聞こえ
ないという状況に関する生瀬の科白がかなりの説明ゼリフで、この監督の悪い癖
だと思う。しかし、最初のオレ詐欺のシーケンス。難波、阿倍野、淀屋橋、と場
面を繋ぐスピーディな造型と、続く釜ヶ崎(西成あいりん地区)の広場や「ふれ
あい荘」での曼荼羅−宇崎竜童の登場あたりで、演出も落ち着いてきて、調子が
良くなるのだ。宇崎の怪演は特筆すべきだし、釜ヶ崎を走る月曜日の巫女の存在
も登場時点から面白いと思う。

 上で撞球場の女主人のことを書いたが、本作のストロングポイントの第一は、
主人公の造型あるいは釜ヶ崎の町の描き方にあると私も思うけれど、それと同じ
ぐらい、魅力的な脇役が多く出てくることも、本作の良い点だろう。鴨鈴女以外
にも、沢山書きたい役者はいるが、こゝでは女優のみ上げよう。まずは、安藤と
弟−山田涼介が参加する賭場の胴元・林田−サリngROCK。この人の気持ち
悪さが実にスリリングだ。あと、東京の投資家・胡屋−淵上泰史の現在の秘書−
縄田カノンは、安藤によく似ており、相似性を感じさせられる。これは上手いキ
ャスティングだと思った。そして、良いタイミングで登場して見せ場を作る天童
よしみ、安定した存在感の江口のりこも書くべきだろうが、警察側担当メンバの
中の研修生−田原靖子が面白く緩急の緩を作っている。それと、女優ではないが、
岡田准一の特出がとても効果的だったということも書いておきたい。

 ただし、ゴヤ(胡屋)にまつわるプロットの見せ方には少々違和感を感じる部
分がある。例えば、彼が安藤にこれだけ執着するのは甚だ疑問だった。これはそ
ういう体(テイ)をオモンパカって見るべき部分だと思いながら見た。さらに、
山田の東京での顛末については、彼の感情の前提をもっと描きこんでおくべきだ
った思う。唐突過ぎて納得性が低い。