いわゆるシンギュラリティを題材にした映画。なので学習とそれによる変貌の
描写がポイントになる。このAIの名前が、タイトルロールのM3GAN(ミー
ガン)だ。細かい粗はあるけれど、活劇として良く出来ている。
人間側の主人公は、ペット型ロボットの開発者ジェマ−アリソン・ウィリアム
ズ。両親(母親はジェマの姉)を事故で亡くした姪のケイディを引き取ることに
なる。最初は心を開かないケイディだが、ジェマが卒業制作で開発したロボット
(専用のグローブと連動して遠隔操作できる産業用ロボットみたいな機械「ブル
ース」)と遊んだことで、笑顔を見せる。これにヒントを得て、ジェマは、子供
の親友になり躾けもする、人型のAIロボットを開発するのだ。実は、この辺り
の展開はちょっと性急過ぎるようにも思うが(基礎技術はあったとはいえ、一週
間程度で開発してしまう)、しかし、この早い展開が、テンポが良いとも云える
だろう。
最初に書いた通り、M3GANは学習しながら成長するが、それと共に、当然
ながら(?)、ケイディとジェマの成長も描かれている。これは、もうアメリカ
映画の常套的作劇と云えるだろう。しかし、この部分は、少々紋切り型の感覚も
持つ(よくあるパターンだし、簡単に変化し過ぎではないか)。
私が本作のことを良く出来ていると考える、まず第一の点は、M3GANの表
情の造型だ。例えば、彼女は、夜、ソファに座らされて、スリープ状態の際も、
場面によって表情が違うように見えるのだ。他にも、野外活動のオモチャ置き場
に座らされている最初のショットでは、不貞腐れているように見え、男の子を見
る表情は険しく見える。これって、本当は同じ表情なのに、シーンの意味や前後
の状況によって、人形に感情があるかのように見てしまっている可能性も否定で
きないが(モンタージュ理論のクレショフ効果的なもの)、私は微妙に顔の表情
を変化させているに違いないと思う。
あと、M3GANの変貌以上に私が興奮を覚えたのは、ケイディの変貌であり、
彼女の感情の振幅がプロットを面白くしている面も大きいと感じた。端的に云え
ば、鬱と躁というか、あるいは、悲しみから喜び、怒りと喪失感、そして信頼感
だ。ケイディが暴れ出し、ジェマの頬を打つ場面もまた、本作のハイライトだろ
う。
終盤の対決は予定調和な感もするし、もうちょっと空間的広がりがあっても良
かったとも思うが、M3GANのルックスの痛々しさは良かった。尚、ジェマの
上司(CEO)のデヴィッドと、その秘書(?)のカートへの仕打ちは可哀想だ。
この廊下のシーンの演出が面白いから許してしまうのだが。それと、カートがデ
ータファイルをコピーする場面があるけれど、これが放りっぱなしなのは気にな
った。AIホームアシスタントの「エルシー」の扱い含めて、次作への布石なの
か。にしても、ファイルコピーのシーンなんて、切ってしまっていいと思う(本
作の中でも伏線として機能すると予期しながら見てしまうじゃないか)。
また、高圧洗浄機のシーンは、欠落しているカットがあるような気がして引っ
掛かった。見終わって、IMDbを読むと、レイティングを下げるために、いくつか
グロいショットをカットしたようだ。また別バージョンが出るかも知れないです
ね。
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