赤い光が明滅する。全編に亘って赤い光に覆われるシーンが頻出する。冒頭シ
ーンは、ロバの運命の象徴のようでもある。赤い照明は不穏さの予感に思える。
また、ロバの瞳を映したショット、瞳に語らせるショットも多い。しかし、ロバ
のミタメはほとんど無い。序盤の動物愛護団体のデモ(すべての調教は虐待だと
云う)の場面での、四辺がぼやけたショットだとか、夜の水辺のカエルを追った
(これも四辺がぼやけている)ショットなんかは、ロバのミタメだと思うが、ご
く僅少だ。
それに、震撼とさせられるのは、純粋な客観ショット(つまり、作り手のミタ
メ)ばかりだ。しかも、ロバにカメラが寄り添ったシーンではない画面(ロバが
見たはずがない場面)に、驚かさる部分が多い。例えば、ドローン俯瞰で、森の
上を移動する映像(こゝも赤い光の画面。フィルターワークか)を数カット繋ぎ、
風力発電の風車がある場所へ至る部分。あるいは、サッカーの祝勝会及び殴り込
みシーンの後の、ロボット犬の部分(こゝも赤い照明の画面)。あるいは、サー
ビスエリアに駐車した馬運車の運転手の顛末を見せる部分(こゝも赤い照明)。
その他の瞠目した画面を上げておくと、序盤の金属スクラップ工場における、
先端に大きな爪が付いたアームの俯瞰(これはアームに置いたカメラから撮った
ショットだろう)。あと、芦毛の馬が全身をジャンプーされるシーンや、続く、
この芦毛と鹿毛(?)との一触即発状態。そして、ロバが柵を越えて道路を走り、
山の中へ入ってからの一連のショットもいい。墓や水辺。フクロウやキツネが出
て来るが、いずれも同一フレーム内にロバも映しこんだショットがある。これに
は恐れ入った。恐ろしく手間暇が掛かっているだろう(このあたりはロバに寄り
添って描いたシーンと云える)。
また、出て来る人間が皆、予測不能で理屈の希薄な動きをするのが面白い。ロ
バを溺愛するカサンドラ−サンドラ・ドルジマルスカの再登場シーン(ロバの誕
生日?)もいいし、上にも書いた、馬運車運転手の顛末、そして何よりも、唐突
に登場するイザベル・ユペールのプレゼンスの鮮やかさは特筆すべきだと思う。
ほとんど特別出演のような扱いだが、得たいの知れない言動、一挙手一投足には
目が離せなくなる。
#かなり昔(30年以上前)の私の経験ですが、当時、乗馬や競走馬を輸送する
トラック(馬運車)には「馬匹輸送」と書かれていました。対して、食肉用の
馬を輸送するトラックには「活馬輸送」と書かれていて、最初見た時は驚きま
した。愛馬を「活馬」輸送車に乗せる際には涙する関係者もいました。
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