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『FALL/フォール』
(スコット・マン,2022)

 これメッチャ面白い!本作のアスペクト比は2:1で、ビスタとシネスコの中
間サイズ。縦にも横にも広く見せる効果を出したかったのだろう。これが見事に
功を奏していると思う。冒頭アバンタイトルの断崖絶壁のシーンからその効果を
発揮する。あるいは、主人公のベッキー−グレイス・キャロライン・カリーと親
友のハンター−ヴァージニア・ガードナーが、全米で4番目に高い構造物という
600メートルの鉄塔に登り始め、最初に塔を横から撮った超ロングショット、
これが本作のベストショットだと私は思ったが、これなんかも縦横の広大さをも
っとも実感するショットだろう。ちなみに、このロングショットの後景の空の左
上に、小さく雨雲を見せている。これは後の嵐を予感させる処理で、伏線と云う
よりは事前予告みたいなものか。本作は、こういう伏線というワケではないが、
後半、終盤でも反復される小さな道具立てを序盤からいくつも繰り出して、この
演出も、とても上手いと感じさせるのだ。

 では、上に書いた事前予告みたいな道具立てを例示したい。まず、プロローグ
(アバンタイトル)で出て来る岩壁の穴が、鳥の巣であるということ(穴の奥か
ら撮ったショットの挿入がいい)。鳥は後半に大活躍する。あと、鉄塔への挑戦
前の、ベッドで朝を迎えるシーンで出て来る「143」のサインと、体に血がべ
っとり付いているイメージ。モーテルから出発する際、トラックにぶつかりそう
になるが、これも、後半、ある物を使って反復されていると思う。そして野犬と
ハゲワシ二羽の場面での「まだ生きている」あるいは「適者生存」というキーワ
ード。鉄塔のボルトが揺れるのも、プロローグの岩壁の小さな窪みの脆さを思い
起こさせる、などなど(他にもあるが、ネタバレを嫌って割愛します)。

 さて、終盤の幻覚のツイストは、どうだろう。私はこれは、やり過ぎと思う。
作り過ぎのイヤラシさを感じた。こんなことをしなくても、ストレートに見せた
方が面白かったんじゃないか。ドローンの充電シーンなんかは現実なのか。「ど
っちから誘ったか」の話や、プロレス、WWEの話は幻覚前後どっちだっけ?と
か、にわかに思い出せず、もう一度見たくなってしまうじゃないか。そういう意
味では、リピーターを増やすという興行的効果はあるだろう。本作のスリルをも
う一度味わいたいと思う人は少ないかも知れませんが。とにかく、全体にスリル
満点の実に良く出来た映画だ。

#本作は、ディープフェイク技術を使ってアドリブのダーティワードを修正して
 いる(セリフだけでなく口元や表情を修正している)というニュースを見聞き
 していたので、見たかったという動機もあった。しかし、全く違和感ありませ
 んでした。