ファーストカットは吹雪の中、前進移動するショット。これいい。抜群のオー
プニングじゃないか。画面奥に動物の群れ。近づくと、野生馬だろうか。家畜で
はないと思う(以降、牧場のシーンに馬は出ない)。馬の群れが左にはけても、
そのまゝ前進移動するカメラ。風の音に交じって足音のような音が聞こえる。狼
かと思った。こゝまでワンカット。カットを換えた2カット目は、羊舎の窓の向
こうに羊。こゝから、羊舎の中の不穏なショットを連打して、謎を残す。
舞台は、マリア−ノオミ・ラパスとイングヴァル−ヒルミル・スナイル・グド
ゥナソンが、牧羊を営む農場。全編この農場とその周辺しか映らない。羊舎と家
屋は山すそにあり、雪をいただいた山が近くに見える風景が壮観だ。動物は羊の
他に、猫と犬が出て来る。牧羊犬。そんな彼らは、赤ちゃんを授かる。この子の
名前がアダ。嬰児のアダの見せ方はちょっといい加減だ。例えば、アダがいなく
なり、マリアとイングヴァルが捜すシーン。彼らの横移動ショットはシネスコが
とても活きる画面で、構図はいいと思ったが、アダが歩けるとは思っていなかっ
たから、羊(母羊)と一緒に居る、というのには唖然としてしまった。
また、もう一人の主要人物、ペートゥル−ビョルン・フリーヌル・ハラルドソ
ンの登場は、仲間の車から放り出された犯罪者かと思ってしまった。さらに彼が、
もっとプロットをかき混ぜる役かと思ったが、案外大人しい人物に収まるのは肩
透かしだ。ただし、ペートゥルとアダが手を繋いで歩くショットの絵面は可愛い。
そして収束はファーストカット及び序盤の不穏なシーンの種明かしでもあるの
だろう、こゝまで見せるか、という造型で満足感の得られる演出だと思ったのだ
が、しかし、ラストカットはどうだろう。主演女優としてのノオミ・ラパスの存
在を強調したかったのは分かるが、もっと簡潔な暗転で良かったのではないだろ
うか。
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