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『THE BATMAN−ザ・バットマン−』
(マット・リーヴス,2021)

 アベマリア。邸宅の俯瞰。窓の向こうを双眼鏡で窃視したミタメのショット。
ハロウィンの日から始まる。モノローグの多用。全編ほとんどが夜。屋内シーン
もローキーが多く、夜の屋外は常に雨が降っている。このルックの統一とハード
ボイルドのムード醸成は見事だと思う。

 しかし、展開は鈍重にも感じる。電車からホームに降りたアジア人を暴行する
若者たちとのアクション場面や、アイスバーグ・ラウンジ(双子の門番のいるク
ラブ)での乱闘アクションなどの見せ場もはさむが、本当に瞠目したのは、葬儀
場の爆発のクダリを経た、警察署内のシーンでの、警部補−ジェフリー・ライト
を殴って屋上から逃亡するシーンまで無かった、というのが正直な感覚なのだ。

 続く、建物の影からのバットモービル登場と、ペンギンとのチェイスシーンも
見せた。ハイウェイの逆走、タンクトラックの炎上と、バットモービルのジャン
プ。この辺りでようやく映画が走り出した感覚を持つ。ただし、その後も徐々に
失速する。

 これは別にアクションシーン以外が長い、というようなことだけを云っている
のではなく、例えば、アイスバーグ・ラウンジというクラブが本作の舞台設定と
しては重要な場所だと思うのだが、クラブ内の造型が物足りないのだ。モブシー
ンらしきショットは完全に省略されているでしょう。この場所が、もっとスペク
タキュラーな画面で造型されていれば、私は多分、失速なんて言葉を使わないと
思う。あるいは、銃乱射と洪水の舞台となる会場のシーンも、決定的に群衆(エ
キストラ)の数が足りないと私は思った。

 さて、役者は皆いい。パティンソンとクラヴィッツには今後も大いに期待する。
ファルコーネを演じたジョン・タートゥーロを、私は久しぶりに見たが、相変わ
らずの存在感で感激した。コリン・ファレルは全く面影の無いメイクアップじゃ
ないか。これはちょっと可哀想にも思う。警部補−ジェフリー・ライトの活躍と
検事−ピーター・サースガードのバイプレイヤーぶりにも嬉しくなる。そして、
ポール・ダノの造型、いいですね。ダイナーのカウンターでの後ろ姿のショット
もいいが、接見室で唄う場面が素敵!アベマリア。