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『MEMORIA メモリア』
(アピチャッポン・ウィーラセタクン,2021)

 まずは強烈な音の映画。また、この監督らしく眠る人の映画でもある。ファー
ストカットから、人によっては音使いに飛び上がりそうになるだろう。この音が
全編を支配するテーマだが、単なるマクガフィンと云ってもいい、人を食った扱
いでもある。他にも、勝手にハザードランプが点滅する自動車の場面の警告音。
これは、『光りの墓』にも出て来た機械の自律性のモチーフを想起する。あるい
は、音響技師エルナンに冒頭の音の再現(音作り)をしてもらうシーケンス全般
や、後半でエルナンを捜してスタジオに入った際の、バンド演奏シーンも、良い
音の場面だと思う。

 眠る人のモチーフは、ファーストカットが眠るティルダ・スウィントンの画面
だ、というのは大したことではなく、矢張り、彼女が、入院する妹の病室を訪問
しているシーンがまず重要だろう。眠っていた妹は、やゝあって起き、犬の夢の
話をし、そのうちまた眠るのだ。そして、何と云っても、終盤の、川岸で魚のウ
ロコを取る男の場面。名前は(彼も)エルナンと云う。宇宙の仲間の話。物語は
どこにでもある、という警句。彼が横たわった後の時間の扱いは凄い!これぞ驚
くべき眠る人の描写なのだ。こゝは全くぶっ飛んだシーンだ。

 他にもカッコいいシーンがいっぱいあって、ちょっと例として記しておきたい。
スウィントンは、音響技師と植物(蘭)の冷蔵庫の会社を訪れるが、その直後に、
家電量販店のような店の前の舗道を、二人歩く場面がある。こゝの横移動の長回
しが、とても決まっていて驚いた。あと、夜、通りを歩くスウィントンと、まる
で追って来るかのような犬のカットや、運転するスウィントンを助手席側から撮
ったカット(ハイウェイに入ってからのスピードと揺れ)。そして、町の通りで、
人骨の研究者−ジャンヌ・バリバールと何かを食べているショットも。気が狂っ
たよう。私もよ。という会話。

 さて、エンディングの山(森)と空のカットを繋げる処理はどうだろうか、こ
れらも、とても美しい、フォトジェニックなカットだが、冗長と云われればそう
とも思う。この余韻を良しとするか、余韻なく、暗転の方が潔く良いと考えるか。
ただし、私は、このカットで暗転だろうな、と思ったカットで暗転した。