全編全カット手持ち撮影か。ずっと小刻みに揺れている画面。浮遊感ではない、
揺れている。臨場感創出のためなのだろう。動きのあるシーンが多い映画なので、
ほとんど気にはならないし、奏功している場面が多いのだが、例えば、松山ケン
イチと木村文乃が二人で東出昌大の試合を観戦するシーンなんかでは、けっこう
揺れが気になった。固定して欲しいと思いながら見た。
全般的な感想を云うと、本作もとても良く出来たボクシング映画だと思う。主
役は松山で間違いないが、後輩の東出と、その彼女の木村との関係、あるいは、
カッコつけたいためだけで習い始めた柄本時生の成長の描写が、バランス良く挿
まれている。主役は松山だけでなく、東出と柄本と三人だ、と云いたくなる。ボ
クシングのファイトシーンは、ちょっと端折られている部分も多く、フルショッ
トが足りない感もするが、逆に云えば、ポイントを絞って簡潔な構成だと思う。
ただし、私には、気になった部分がいくつかある。無粋を承知で、記載すると、
まず、東出のパンチドランカー状態の描き方は、もう少し控えても良かったんじ
ゃないかと思った。例えば、自転車で転けた後の場面の画面エフェクトは、やり
過ぎではないか。勿論、こういった演出があるから、全編通じて東出のシーンに
緊張感をもたらしている、とも云えるのだが、私には、思わせぶりに過ぎると感
じられる。
あと、対戦相手の強弱が、一貫性に欠けるように思える。例えば、赤い髪の洞
口(守谷周徒)のスパーリングシーンだが、松山相手のときと、柄本相手のとき
とで、明らかに動きが違う。柄本との際は、スパーリング前から弱っていた、と
いうことなのか。あるいは、元キックボクサーの描き方もそうで、柄本との対戦
場面では、松山との時よりも、弱くなっているように感じられたのだ。これらは、
逆に云うと、松山よりも、柄本の方が強い、という理屈の上に成り立つ展開だと
思うのだが、そのあたりが、画面で上手く具現化されているとは、私には思えな
かったということだ。
終盤、松山がほとんど退場して、どう終わるのだろうかと思わせるが、なかな
か爽やかなエンディング。観客席の上から見る松山のモノローグと、柄本の動き
がシンクロする演出はいい。また、蛍光灯のスイッチの紐と、シャドーボクシン
グも微笑ましい。
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