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『Mank/マンク』
(デヴィッド・フィンチャー,2020)

 面白かった!そりゃ『市民ケーン』を見ておいた方がいいだろうし、できれば
1930〜40年代のハリウッド映画について、ある程度知識があったほうが良いとは
思いますが、しかし、そんなペダンティックな面白さだけではない、活劇として
のテンポの良さ、画面の強さ美しさを持った映画だと思うのです。まずは、光と
影の扱い。まるでグレッグ・トーランドのよう(と云うとペダンティックになっ
てしまいますね)。とは云え、これ見よがしなディープフォーカスは避けている
のが、いいです。また、アップテンポのジャズの劇伴が興奮させてくれます。そ
して、ゲイリー・オールドマンは勿論のこと、ハースト役のチャールズ・ダンス
の貫禄と、マリオン・デイヴィス役のアマンダ・セイフライドの肝の据った様は、
出色の出来じゃないでしょうか。この二人がカッコ良く描かれている、というの
が、懐の深さを感じさせるのです。
 ただし、1934年のカリフォルニア州知事選、民主党候補アプトン・シンクレア
が焦点になっていくプロットは、時事的に入れたかったのは分かるが、一般の観
客を、置いてけぼりにするのではないでしょうか。いや、画面造型は、こゝも、
見事ですが。 

 さて、以下はクラシック映画ファンとしての雑感を書き連ねさせていただきま
す。まず冒頭、ジョン・ハウスマンが全然似ていないと思っていると、電話でウ
ェルズが登場、声、口調はそっくりだ。AIで作ったのかと思った。
 チャールズ・レデラーを連れてセルズニックの部屋へ行くメンバーにはベン・
ヘクト、チャールズ・マッカーサーがいる。部屋には、スタンバーグが。こゝは
なかなかの見せ場だ。
 あと、マンクとマリオン・デイヴィスが、二人でハースト邸を散歩して、ち
ゃんと動物園のようになっているのを見せてくれるのがいいです。
 ウェルズが、カンヅメ場所に訪ねて来、マンクが「クレジットが欲しい」と云
うと、激昂するシーン。薬瓶の箱を暖炉に投げつけるウェルズ。それを見て、脚
本を書き直そう(脚本にこの場面を取り入れよう)とするマンク。こゝが一番、
くすぐられた。
 そして、なんと云ってもマンクの弟、ジョセフも大きく扱われている。これが
ファンとしては嬉しい!

#もっとも、『市民ケーン』がいまだ世界映画史上ベストワンなのは、マンク以
 上に、ウェルズとトーランドの功績だと、私は思っています。悪しからず。