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『1984』
(マイケル・アンダーソン,1956)

 オーウェルの小説は既読で見る。原作との比較の話になって申し訳ないが、か
なり原作に忠実なプロット展開。端折っているけど、大意は外していない。バサ
ッと削ったのは、政治行政に関する背景と言語破壊の部分で、小説としては重要
だが、映画のプロットという意味では影響が少ない部分であり、賢明な措置と云
えると思う。

 美術装置としてのデザインの具現化に目をやると、まず、テレスクリーンの造
型はしょぼい。職場(真理省)や主人公の部屋の内装、あるいは、戸外における
街並み、ビッグ・ブラザーのポスターや看板のある風景も、とてもシンプルな造
型で、大作感はないのだが、息苦しさの感覚は強調されており、悪くない。

 主人公のエドモンド・オブライエンは鈍重過ぎるように感じるし、ヒロインが
ジャン・スターリングというのは少々寂しい。知的な美しさはあるが、もう少し
セクシーさ(というか、情事のシーンのギャップ)が欲しい。高級官僚のマイケ
ル・レッドグレーヴと主人公の隣人ドナルド・プレザンスは怖さが良く出ていた。
ただし、「愛情省101号室」のシーンは、生ぬる過ぎる。