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『8年越しの花嫁 奇跡の実話』
(瀬々敬久,2017)

 ファーストカットは、入院中の土屋太鳳のカット。次に、もくもくとわき上が
る雲のカットが来るのだが、もうこの冒頭から心つかまれる。本作もまた、主演
女優の顔の映画なのだ。土屋の顔は、通常生活時、重篤な状態、回復期、記憶を
取り戻そうとする終盤、いずれのシーンにおいても、画面に釘付けになる力を持
っている。

 実は、随所でプロットはベタ過ぎるし、科白はありきたりだとも思う。もっと
切って欲しいと感じたカット(特に回想・フラッシュバックや携帯電話の動画の
重複)もある。しかし、それでも奇をてらわない正攻法の演出と、安定した撮影
によって、全編に亘って力のある画面を造型し、緩みがない出来だと思う。

 まず全般に、岡山の街の、海と山が近いロケーションの取り入れが、奏功して
いる。プロポーズする場面の夜景や、小豆島での歌舞伎観劇、校庭のブランコと
その後景のきらきらする海のカットなど、望遠撮影の画面が美しく、胸を打つ。
特に、このブランコのシーンは見事な造型で、さらに、この校庭へ土屋が車椅子
で訪ねて行く場面からのクライマックスは本当に良く撮れた感動的なシーンだ。
抱きしめられて歩く土屋の顔を俯瞰気味に撮ったカットにしびれる。

 土屋のことばかりを書いてしまったが、佐藤健の納得性の創出も良い仕事だ。
現実離れしたキャラクターだと思うが(事実は奇なりなのだが)、納得させられ
る表情と所作、リアクションを繰り出し続けるのだ。
 そして、佐藤健が撮影する携帯電話の動画の使い方についても特筆すべきだろ
う。かつて、映画の中でプライベートムービー(8mmフィルム等)が上映される
映画は数多あるけれど、本作の携帯電話の画面も、立派に映画中映画として説得
力を持って機能する。それはエンドクレジット中まで続き、この部分も、とても
満足感がある。(上手に撮影され過ぎているきらいはあるけれど)