公開時見た際に次のように書いたメモが残っている。「はっきり云って少々失
望した。素敵なシーンは沢山あるけれど、これはちょっと..というシーンも沢山
ある。別に完璧を求めている訳じゃないが、澤井信一郎には大いなる期待があっ
た。とは云え、三田佳子の演技は心底凄いし、薬師丸ひろ子もまあ頑張っている。
この二人の見せ場をバッチリ決められる演出も日本映画にあってはちょっと突出
した図太さだろう」
今回スクリーンで再見する機会を得、あらためて約40年前の感想とほとんど
変わらないと思ったが、しかし、後半の劇中劇シーンの亢奮は、今回の方が大き
かった。三田も薬師丸も、純粋にその演技演出に鳥肌が立ち、自然に涙が溢れた。
それは、これら板の上のシーンにおける、フルショットやロングショットから、
ウエストショットあたりに寄るタイミングが極めてカッコいい画面造型も大いに
寄与しているだろう。
あとは、素敵なシーンと、これはちょっとというシーンを例示しておこう。ま
ずは、薬師丸のアパートのロケーションと、外観の見せ方。画面右端に伸びてい
る坂道と画面左上に二階の窓を収めたショットがいい。特に、階下にいる世良公
則に向かって、スカートを持ち上げてポーズ(調べるとカーテシーというポーズ
らしい)をする薬師丸のショットは素晴らしい。これがラストショットへの伏線
となる。
カメラワークだと、俯瞰から下降移動と極めて緩やかなズームインを取り入れ
た、次の2つの屋内シーケンスショットは特筆すべきだろう。1つは、絵沢萌子
の飲み屋での世良と薬師丸の会話シーン(世良の友達が役者を諦めたキッカケの
話をする)。もう1つは、大阪のホテルで、三田が自分の部屋に薬師丸を引っ張
り込んでからの2人の場面。こゝの三田の迫力は、少々臭いと思いながらも瞠目
せずにはいられない。これら2つの長回しは、いずれも俯瞰から下降し、ゆっく
りと寄っていくという相似のカメラワークだ。ついでに書いておくと、ホテルの
部屋での仲谷昇の扱いも面白い。
あと、イマイチな点ということでは、前半は、劇団研究生たちのダンスやオー
ディション準備を映した画面造型の安っぽさが、テンションを弛緩させていると
思うし、演出家としての蜷川幸雄の扱いも私はワザとらしいと感じる。しかし、
本作の一番の欠点は、多くの人が指摘するように、ラスト、エピローグの存在だ
ろう。私は、高木美保の唐突な登場や、薬師丸のストップモーションは許容する
ことができるが、ひとえに、この冗長なエピローグがなければ、という感想を持
つ。本作が劇中劇で終わっていれば、時代を代表する傑作になっていただろう。
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