現実の世界に小説の世界が侵食し交錯する二重構造の魅力は前作『花様年華』
の方が周到に計算され映画的な効果を上げていたし、登場人物を複数配置したこ
とでプロット展開の収斂度も劣ってしまい散漫な印象も否めないのだが、しかし
それでも個々のシーンは実に魅力的だ。前作迄のスタンダードサイズを継承せず
本作からシネマスコープサイズを採用しているのも、スケールをアップしながら
一層の閉塞感創出に貢献している。また個性溢れるスター俳優達を見ていると、
映画を見る快楽とはとりもなおさず被写体の魅力を見る快楽であることを思い起
こさせてくれる。チャン・チェンとドン・ジエの起用はいかにも中途半端で惜し
いけれど、チャン・ツィイー、コン・リー、フェイ・ウォン、カリーナ・ラウに
ついてはそれぞれの個性が際立つとびっきりの画面が用意されている。中でもチ
ャン・ツィイーの役は芝居のしがいがあるいい役だ。また云うまでもなくトニー・
レオンの複雑な表現は本作でも素晴らしい。それに視線のぎこちなさをこの人の
個性だと思って割り切ってしまえば木村拓哉だって決して悪くない。
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